日々の読書日記

読書の忘備録です

124回目「憐れみの3章」(ヨルゴス・ランティモス監督)

絶賛上映中のヨルゴス・ランティモスの新作。新作が公開される度に毎回映画館で観るのは、ランティモスとアルモドバルです。なんとなく、好きなんです。

それぞれ独立した3つの物語。

はっきり言うと、3つの物語ともストーリーを思いつくままに書いたような手触りがあり、かなり荒唐無稽だ。いや、それぞれ粗筋はあるのだけれど、登場人物のバックボーンとか、行動に至る理由などが意図的に省略されてる感じがする。

例えば、1話目。

ある男に絶対的に服従して、生活を管理されてる男の話。普通なら、なぜ彼らは支配・被支配の関係になったのか、その理由というか、そのような関係に至った過去の背景なんかを描いたりしそうだが、そういう描写は全くなく、ただただ、支配・被支配の関係だけが投げ出さている。それが故に、観客などお構いなしにスイスイと荒唐無稽なストーリーが展開する。とってもスピーディーで面白いのだが、やや先走りすぎてる感じがしないでもない。しかし、ともすれば単に悪趣味で不快なだけの作品に陥りがちな題材を、このスピード感とデタラメなストーリーでもって上手く料理しているため、緊張感の途切れない一級のエンタメ映画を観ている感覚にさせられる。見事な手腕だと思う。

予告編で流れていた、エマ・ストーンのクネクネダンスと、ラストのケチャップのシーン(話と全く関係のない)は、思わず笑ってしまった。

3話目のラストは、少しやっつけ感があったので残念。